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アリの王国

 

2002年4月30日

えー、今回は私のアリに関するちょっとした経験談をひとつ、語ってみようかと思います。


それは、私が大学の冬休みで実家にいた年末のとある日。
12月の末という事もあってか、世間は年越しの準備真っ盛りで、私の家でも年末の大掃除が行われていました。
もちろん、私もさんざん家の掃除を手伝わされていました。
で、この日、家の前の電灯がそろそろ汚くなってきたという事なので、久しぶりにその電灯の掃除をすることになりました。
その電灯は家の正門入口の前に設置してあるケース付きもので、いわゆる門灯いうというやつです。
門灯の長さは30センチほどで、形状をざっと表現するなら、このようになりますか。
青い部分が門灯のケースで、下の陰線部分は塀の一部です。

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        電球電球     
        電球電球     
   ―――――電球電球―――――
   ―――――電球電球―――――
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と、こんな形の門灯があるわけですが、かれこれ10年近く掃除をしなかったということもあってか、この門灯、外側だけでなく電球の部分もだいぶ汚れていました。
年末大掃除中でありいい機会だったので、外側から雑巾で拭くだけでなく、中の電球やその土台の部分も綺麗に掃除してしまおうと思い、上の蓋を取り外し、そして電球を固定している蓋(電球横の白線の部分)を取り外しました。

その蓋を開けると、奇妙なものがそこにはありました。
オレンジ色をした小さな粒上の物体が数万、いや数十万か、蓋の下の空間にびっっっっっしりと敷き詰められていたんですよ。
はじめは何かよく分からなかったんですが、顔を近づけてみてみると、その小さな粒上の物体のそこかしこで、大量のアリがうごめいている。
私はすぐに理解しました。
つまり、そこはアリの巣であり、そのオレンジ色をした粒上の物体はアリの卵であったということなんですね。
大体こんな感じです。

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        電球電球     
        電球電球     
   卵卵卵卵卵電球電球卵卵卵卵卵
   卵卵卵卵卵電球電球卵卵卵卵卵
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いやはや、これを見た時にはさすがに驚きましたよ。
まさか電灯ケースの中にアリの巣があるなんて予想もしなかったし、それに地面の下でツリー状になっているというのが一般的なアリの巣がまさかこんな変則的な形で存在するなんて思いもしませんでしたし。 さらに、昆虫図鑑ですら見た事無かったアリの卵の実物を見れるとは、しかも1度に数十万個も。
なぜこんな形でアリの巣が存在していたという明確な理由は、昆虫学者ではない私にはよく分からないのですが、おそらく、門灯の部分は電気による熱で温かくなるので、暖を取れるこの快適な空間にアリ達は巣を作って住みついたのではないか、と私は睨んでいます。

そんな世にも奇妙な形態出存在していたアリの巣、あまりに珍しい光景だったので、私は1時間ほど見入ってしまいました。
いい機会だから生きている女王アリというのも見れるかなと探してみたのですが、しかしいくら探しても女王アリは見つける事が出来ませんでした。
もう死んでいたのか、それともどこかに隠れるように存在していたのか、真実は結局わからず時舞でしたが、あれは幾分残念でしたね。

さて、結局その後、あのアリの巣はどうなったかというと、当然処分してしまいました。
まずアリ用の殺虫剤でその卵とアリを一斉掃射、そしてすかさず水洗い、いわゆる水攻めですね。
最終的には、電灯ケース内にあったアリとアリの卵は全部綺麗さっぱり掃除してしまったんですが、しかしアリ達の立場からすればアルマゲドンクラスの天変地異だったことでしょう。
アリ達の視点による物語として表現するなら、おそらくこういうのかも。

先代の方々が見つけたこの国は、暖かく快適で、まさしく楽園であった。
我々はそこに王国を築き上げ、そして女王の支配するこの王国を充実させるために、一生懸命働いていた。
平和で周囲に天敵のいない我々は、毎日が幸せだった。
しかし、まさかその幸せが一瞬にして全て崩壊する事になるとは、一体誰が想像したであろうか。
その日、まったくの突然に、それまで光の届かない場所だったその国に、大量の光が降り注いだ。
『どうした!?何が起こった?』
国の人々は突然の出来事に慌てふためき、パニックを起こしていた。
そして直後、突然上空から白い色の異様な雨が降り注いで来た。
『何だ…これは…?く、苦しい……』
その異様な雨は、我々全員に地獄のような苦しみを与えた。
中には、死ぬものも少なくなかった。
そしてその直後、更に最悪の事態が我々を襲った。
今だかつて無いほど大量の洪水が、我々の王国を襲ったのである。
『うわぁぁーーっっ!!』
仲間達が次々に流されていく。
ああ、女王の産んだ卵も流されていく……。
それは地獄のような光景、いや、これこそが正に地獄そのものだったのかもしれない。
異様な雨、そして洪水。
その2つの出来事により、全ての民が死に絶え、そして洪水によって流されていった。
我々の王国は一瞬にして消えてしまった。
一体何が起こったというのか?
そして、なぜこのような事が起こったのか?
皆は、このような疑問を持っただろう。
そして、おそらく、誰も答える事は出来ないだろう。
この世界には、我々の想像もつかないような強大な力が働いているのだから。
−ある一匹のアリの手記より−


慣れないくせに物語っぽく書いたので結構変な文体になってますが、まあとにかく大体こんな感じなんでしょう。
文章を読み返してみるに、チトかわいそうな事をしたかもという気もしますが、しかしあんな所に巣を作る事自体がそもそも間違った行為なので、私がせずともあのアリの巣はいずれああなる運命だったでしょう。

ともあれ、あのアリの巣と大量の卵は、今でも忘れる事が出来ないほど、インパクト大な光景でした。
今でも、あの日は珍しいものを見る事が出来た、と今では思ってます。
実際、記録ビデオ以外で数十万個ものアリの卵を肉眼で見る機会なんてまず無いですしねえ。