操作できない野手の動きに悶えろ!
タイトル画面。 この画面を見るだけであのBGMが頭に浮かぶ人も多いのでは? 試合開始! でもこのシーンが終わると音楽がないのでちょっとさびしい…


ベースボール


任天堂 ファミコン


最近ではあまりそういうことは無いようですが、1980年代もしくはそれ以前の時代では、新しいハードが登場するときにはスポーツ系のモノが一通り揃う、というのがよくある現象でした。 サッカーのレビューでも語りましたね。
その理由としてはおそらく、時期的に家庭用コンピュータゲーム機というのもが一般に浸透してなかった頃なため、したがってゲーム機に対する一般の認知度が低くあまり話題になりにくかったのと、また同時にビッグタイトル、キラータイトルというものがまだなかった時代だったからなのかもしれません。
言い換えると、この頃のゲームハードはメーカーやシリーズモノといったブランドタイトルにてそれほど人をひきつけれる時代ではなかった、と。
一応、有名なアーケードタイトルからの移植、というのがこれに該当するとはいえるものの、しかし市場の大きさやアーケードと家庭用機のハード的性能差により移植がムリだったりなど、けっこう難題は多く、キラータイトルといえるほどの影響は無かったものです。 それに、わりと簡単に移植されることも多かったですし。
したがって、この時代においては、最初にハードを牽引する役割としては、得体の知れないキャラが活躍するゲーム、やってみないと奥深さがわからないゲームといった、目新しい内容のモノを出すよりも、誰もが知っているスポーツ物を題材としてゲームを出した方が人目を引きやすくアピールできるものだった、といえます。
実際、ファミコンのみならず他のゲームでも初期に発売されるゲームの大半が、最初に出すのはスポーツモノかもしくはアーケードからの移植でしたし。

ベースボールはそんな環境の下で登場したタイトルです。
登場はファミコン発売と同じ年の1983年。
内容はもちろんタイトルどおりベースボール、いわゆる野球で、それ以外の何者でもないです。
「俺の魂を込めた玉、打てるものなら打ってみろ!」 カキーン! 「そ、そんな…」

機種はファミコン、それもほぼ本体の発売直後に登場したゲームということもあってか、今の複雑で多彩なデータは一切無く、ゲームの内容やシステムはいたってシンプル。
投げて打って捕る。
ホント、これだけです。
プレイすればものの数分で操作感覚をつかむことが可能。
はっきりいって、時代が時代だけに、内容としては必要最低限のベースボールゲームで、実際大した事ないです。
細かい選手データはなく、選手は全員同じ性能だし、プレイヤーは6チームの中から選べるものの、チーム別のこれといった性能差もない。
もちろん代打やピッチャー交代といった要素などもなし。
ついでに言うと、野手は操作できず、守備は完全オート。 おまけにスタミナやデッドボールの類も無い。
プレイヤーが行なえるのはピッチャーの投球と野手の送球、そしてバッターの打撃だけ。
今からみるとあまりにやれることの少ない、ないない尽くしの野球ゲームです。
が、しかし、当時の時代においてはこれでも十分、野球の雰囲気と楽しさを味わえるゲームでした。
元々ハード的に他のゲーム機よりも優れたスペックを持つファミコンだったため、見た目もカラフルで綺麗なため、野球らしい感じが良く出ていたもので、内容も他の家庭用ゲーム機の野球ゲームに比べてかなりちゃんと作ってありました。
ただ、ピッチャーが投げる前に毎回いちいちセットポジションを取ったり、投げた後ピッチャーに返球するというアクションが必ず挿入されるため、当時の有名な野球ゲーム『チャンピオンベースボール』などに比べ、ちょっとそこら辺のテンポが遅いのが気になったものです。 もっとも、あちらはアーケードゲームなのでテンポが速いのはそりゃ当然なのかもしれませんが…。
そういえば、タイトル画面のBGMがテニスやバレーボールと同じ、いわゆる使いましでしたね。

ちなみにこのゲーム、システムが必要最低限のものしかないいたってシンプルなゲーム性の割に、ワンバウンドして客席に入ると二塁打になるという、いわゆるエンタイトルツーベースが採用されてるあたりが妙にマニアックでしたな。
しかもフェンスがけっこう高いせいか、出現率は相当に低く、このゲームは当時かなりやった覚えはあるのにエンタイトルツーベースは2回しか見たことないです。
この存在を知らない友達に『エンタイトルツーベースあるんだよ』といっても、狙って出すことが出来ないので全然信用してくれなかったり。


このゲーム、内容的にはそれなりに良く出来てはいましたが、しかしやはり時代的に野球ゲームというのはまだまだ技術的に難しかったからか、それとも任天堂があえてこのように作ったからか、とにかく真実のほどはわかりませんが、当時を知る人にとってはどうにももどかしいゲーム、妙に腹の立つゲームという部分において印象深いかもしれません。
その最大の原因といえるのが、守備のザルっぷり。
守備はプレイヤーが操作することは出来ず完全オートになっているわけですが、しかしこの守備の動きがわざとやってるんじゃないかってくらいヘタレ。
ライナーで飛んできたボールをよけるような動きをしたり、明らかにボール正面にいるのにスルーしたり。
ピッチャー前のボテボテのゴロをピッチャーがよけてしまったり、またころころ転がっていく遅いゴロボールになかなか追いつけなかったりも。
ひどい時には、ライン際にバントしたボールが外野フェンスに転がっていくまで取れずひたすら追い続けてるということもあったり。
この野手のすっトロくてどんくさい動きがボールを怖がって避けたりヘタクソでトンネルかましているかのようで、なんというか、まるで草野球みたい。
元々実際の野球よりも若干スローテンポなゲーム性なのもあるんでしょうが、しかしそのスピードの遅さを差し置いても、明らかに遅いボールなのに取れなかったり避けてしまったりすることがあまりに多く、このもどかしさはただものではありませんでした。
時代が時代だけに仕方ないといえばそれまでなんですが、しかしこれは何も今の視点から見ていってるのではなく、当時のちびっ子だった頃から大いに感じてたものだったんですよね。 いや実際、このゲームの守備のヘタクソさはいまだに印象深く覚えてますし。 もしかしたら、プロ野球ではなく、本当に草野球をモデルにしたゲームなのかも。
また他にも、送球スピードの関係からか、二塁からホームに送球しそしてホームから二塁に再び送球すると、その間に一塁の走者が二塁に走塁できてしまうという珍現象なんかもあったりして、この理不尽さもすさまじいものでした。
これは一人プレイ時の相手COMがやってくるんですが、こちらが二塁からホームに投げた瞬間に走り始め、100%の確率で走塁を成功させてしまうという。 あわててボールを戻しても間に合いません。 ちなみにホーム→二塁→ホームという送球をすると三塁走者が走塁します。
しかしこの走塁は送球すると同時に走らなければセーフにならないため、見てから行なうのは不可能。 つまり超反応でプレイヤーの動きに連動できるCOMのみが可能なサギ走塁というわけです。 ヒデェ。
これも守備同様、当時の子供たちですら『なんでやねん』と大いに突っ込みを入れてたものです。
もっとも、こういうネタですらも楽しむ要素としてやってたのも確かですが…。


このゲーム、『超スローボール』という有名な裏技がありましたね。
ジョイカードやホリコマンダーなどの外付けコントローラを拡張端子に接続しておくことが前提のこの技。
やり方は、1P側がピッチャーの時、1Pコントローラを速球(下)かスローボール(上)に入力しておき、そして同時に外付けコントローラの方ではその逆方向に入力しつつ投げることにより、ありえないくらいスピードの遅い超スローボールが投げれるというものです。 それこそ、投げてからミットにおさまるまで十数秒ほどかかるという、
加えてボールを曲げることも可能だったりして、その変化具合もすさまじく、キャッチャーに向けて投げた球が直角に曲がって側面のフェンスに当たるという超常現象まで引き起こせたりします。
もちろんこんなとんでもないスーパースロー変化球だとカウントはボールになるわけですが、でもそんな物理法則を無視したボールを冷静にボールカウントを取ってる審判は妙に笑える。

ちなみにこの裏技、実現するには前述のように外付けコントローラが必須なんですが、しかし当時、私の近くに住んでいた同級生のは、その超スローボールが外付けコントローラ無しで実現できたという、他ではみられない珍しいファミコンだったりしました。
彼の持っていたファミコンは超初期型(四角ボタンのアレ)なためか、どうにも壊れやすいものでした。
その中での最たるモノだったのが、コントローラの接触不良。
四角ボタンで寿命が短かったからなのだと思うんですが、かってしばらくしたら1P側のAボタンの反応が相当鈍くなってしました。 おかげで1P側ではろくに操作できないので、わざと2Pモードを選択して2P側でプレイしたりとかもしばしば。
といっても、これだけなら普通のファミコンでもよくある現象なんですが、彼のファミコンで珍しかったのは、Aボタンの反応が鈍くなるのみならず、そのAボタンを押すとなぜかポーズがかかるという、変な接触具合になっていたからです。
それもたまに起きるというレベルではなく、押すたびにスタートボタンを押したのと同じ扱いになるため、Aボタンを押すたびに『ピロリロリロン(当時の任天堂のポーズ音はこんな感じの音でした)と連続で止まりまくるため、まるでゲームにならないくらい。
しかしそれだけなら、接触不良の一種としてまだ他でも多少はありそうな現象ですが、しかし面白かったのは、このベースボールでこのポーズ連発が起きると、なぜかたまに前述の超スローボールが投げれたからでした。
しかも一回二回ではなく、多いときはかなり頻繁に起きていたもので、これを見るためにその友達の家でベースボールを起動させることもしばしば。
なぜそんなことが起きたのか、理由は不明。
最初は一定のタイミングでポーズを入れると投げれるのかと思って、他の友達のファミコンで何度か試したこともあったんですが、しかし何度やってもそんなスローボールは出ない。
おそらくその初期型ファミコンの接触不良の具合がコントローラの電圧に何らかの微妙な変化を起こしたんでしょうが、しかし他ではありえないことなだけに、とにかく奇妙な珍現象でした。
後にも先にも、外付けコントローラ無しで超スローボールが投げれるファミコンを持っていたのは、彼だけだったかもしれません。

そうそう、ポーズといえば、このゲームでは投球中にもポーズが効くという仕様なためか、対戦する時、1P側がボールを投げてバッター前でポーズをかけて『魔球!』とかいったり、投げた後ポーズを連発して嫌がらせをするといった行為も、一時期流行りましたね。 もちろんそんなことをしたら後で険悪なムードになったり。
当時、こういうのよくやりませんでした?


『ベースボール』は至極シンプルな内容の野球ゲームでしたが、でも、こんなゲームでも当時はけっこう人気はあったみたいです。
まだサッカーやバスケなどが盛んではなかった時代というのもあるでしょうが、この当時はみんなスポーツといえば野球というのが定番で、このゲームは誰もが知っている内容でなおかつ対戦できるゲームということから、ファミコン持ってる奴の家に何人か集まると決まってベースボールで対戦してたものです。
実際、私も、友達の家に行った時に、ファミコンしようということになると、かなりの高確率でベースボールでの対戦をやらされてました。
もっとも、私自身は野球がそれほど好きではなかったので、何でみんなこんなにベースボールに熱中してたのか良くわからなかったんですけどね…。 ベースボールよりもマリオやポパイ、デビルワールドやアーバンチャンピオンなどの方が好きでした。
これをプレイする前にチャンピオンベースボールをプレイしてたので、家庭用ゲーム機の中ではゲーム性が優れていても、それほどスゴイゲームには移らなかった、というのもあるかもしれません。
といっても、当時はまだファミコンを持っておらず、持っている友達の家でプレイしただけでしたが、それでもゲームをプレイすることだけで楽しいのは確かだったので、あまり好きではないベースボールであっても、それなりに楽しんでいたのは事実でしたが。 もっとも、スポーツゲームは昔からそれほど得意ではなかったので、このゲームもあまり強くなかったですけど。
というわけで、いろんな部分で印象深いゲームでした。

そういえばテレビでCMもやってましたね。
ホームラン打つシーンが流れてたので、妙に面白そうに見えたんだよなあ。

あと、けっこう売れたのかそれとも生産しすぎたのかはよく知らないんですが、しばらくするとかなり市場にあふれてましたね、ベースボール。
中古ショップなどでは、他のマリオブラザーズやらポパイやらドンキーコングやらの中古カセットが同じような値段で売ってる中で、なぜかベースボールだけが大量に、それもワンランクかツーランクほど安売りされていたのをよく覚えてます。


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