ストーリーは『そこにビルがあるから』です
左のビル全景に注目。こんなビルって存在するのか!?


クレイジークライマー

ニチブツ(日本物産) アーケード


時代は1980年代前半。
当時のアーケードゲームというと、今と比べてシンプルなのが多く、ゲームの細かい設定やストーリーなども無くて当然でした。
なので今のゲームと比べ、ゲームシステム自体がかなり自由でぶっ飛んでいるものが多く、今では到底考えられないようなアイデア先行のゲームも、多数世に送り出されていたものです。
そしてこのゲームもそのうちの一つである、知る人ぞしるニチブツの奇ゲー、『クレイジークライマー』。
主人公は登山者らしいのですが、タイトルに『クレイジー〜〜』とつくだけあって、並の登山者ではありません
このゲームで登るのは『ビル』。
それも100階以上もある超高層ビル
彼はその超高層ビルを、何の道具も使わずにおのれの四肢のみで登るという暴挙にでます。
さすがクレイジークライマー、そんじょそこらのクライマーとはレベルが違いますな。
まったくもって一体どういう経緯でこのゲームのアイデアが捻り出されたんでしょうねえ。
さて、ここまでの説明でおわかりになったと思いますが、ゲームはひたすらビルを登りつづける通称『ビル登りゲーム』です。
えっ、ゲームストーリー?
そんなのがあったとしたらこっちが聞いてみたいんです……。
とにもかくにも、命知らずの主人公クレイジークライマーは、100階以上もある超高層ビルをなんの理由もなしに、窓のへりに手をかけながらただただ登りつづけます。
アホですな。


ゲーム中は彼のビル登りを妨害すべく、さまざまな邪魔がクライマーの行く手を阻みます。
クライマーの手を挟もうとビルの窓をしめたり、ビルの住人が植木蜂などを落として来たり、なぜか上から鉄アレイが降ってきたり、これまたなぜかデカイ看板が落ちて来たり、鳥がクライマーめがけて糞を落として来たり、なぜかビルの途中にゴリラがいてパンチを放って来たり……。
もちろん当たると確実に死にます
どうもビルの住人達はクライマーに殺意を持っているとしか思えないんですけど。
でもそれ以前に住人が植木蜂や鉄アレイなどを窓から投げ捨てたり、でかい看板が落下してきたりなど、いささか社会人としての常識に欠けているようで、クライマーよりもビルの周囲を歩いている人の安全の方が気がかりであります。、
また、鳥の糞(これも考えてみるとかなり異常な光景だけど)はまだわかるとしても、なぜビルにゴリラが住み着いていてパンチを放ってくるのはいかがなものか……。
まったく持って想像を絶するビルです。
一体何処の国なんでしょうか
ここらへんは『ゲームだから』という理由で何一つ説明されていない辺り、昔のゲームですな。
でも逆に、超高層ビルにゴリラが住みついている事について、理論的に納得のいく説明というのもあったら怖いですが……。
そしてこれまたすごいのがビルのデザイン。
ビルに穴があいてるような形は基本で、その逆にビルの左右が削れていたり、なかには右側や左側に細くなっているようなとんでもない設計のビルなどもしょっちゅう。
どう考えても物理法則を無視してます
こんな異常な設計や住人達(一部動物)の住むぶっそうなビルをなんとか無事に上りつめる事が出来ると、屋上にはクライマーを出迎えに来たと思われるヘリコプターが迎えに来てくれます。
このヘリコプターにうまくつかまるとステージクリア(その時のクライマーの姿勢が異常音楽がナイス)ですが、ヘリコプターはゆらゆらと上空で揺れていてなかなかつかめない上、つかまるのに時間がかかりすぎると、無情にもクライマーを置き去りにして飛び去っていきます。
何しに来たんだ。


以上のように、ゲームの世界観は異常かつウルトラ不条理
ですがゲーム事態は実際プレイしてみると、意外にも非常にやりがいのある優れたアクションゲームです。
特に秀逸なのがレバー2つつという独特な操作系統。
それぞれがクライマーの両手の動きに連動していて、右のレバーを動かすとクライマーも右手を動かし、左のレバーを動かすとクライマーもまた左手を動かすというものです。
最初はその独特な操作感に戸惑うかもしれませんが、慣れてくると本当に自分の操作がクライマーの動きに直結しているような奇妙な一体感が味わえます。
今考えてもこの操作方法は、両手を動かすというこのゲームにおいてはかなり直感的で理解しやすく、かつ優れた操作システムではではないかと思ったりもします。
このような独特な操作感覚と、あまりにぶっ飛んだ設定で、当時のゲームのなかでもかなり異彩を放っていたものでした。
もちろんゲーム自体も面白く、妨害などの出現パターンがある程度不規則になっているので、完全なパターンにはできずに毎回新鮮なプレイが楽しめました。
なかでも面白いのが、ゲームのメイン攻撃である植木蜂の類。
これらは窓のヘリに両手でしっかりとつかまっているといくら当たってもミスにはなりません。
当たったら即死にというのが多かった当時のゲームにしては親切。
といってもゲーム自体が簡単というわけではなく、植木蜂など簡単に避けられるような妨害も、窓との複合攻撃によってかなり難しいものとなります。
しかもこの窓、完全にランダムで、ある意味このゲーム最大の妨害ではないでしょうか。
どこから閉まってくるかまるで予測不能で、植木蜂などをふんばっている最中につかまっている窓を閉められたら目も当てられない
もっとも、この窓の存在がゲームを面白くしているともいえますが。


主人公であるクライマーは、ゲーム中にいくつかのセリフを当時のゲームにしては珍しく音声合成でしゃべりますが、それがテレビなどでのプライバシー保護用の変換処理でも行ったような妙に甲高い声で、なかなか笑えるものが多いです。

動かずにじっとしてると
なんだろう
植木蜂などに当たると
いてっ
ミスして落ちる時には
ひょ〜っ
ヘリにつかまってステージクリアで
よいちょ

音楽についてはスタート時とステージクリアの曲のみなので短いものばかりですが、ひょうきんな感じでゲームが明るい雰囲気に感じられたものです。
クレイジークライマーは、プレイ内容自体もかなり優れていて、しかもその上笑えるバカゲーとしても楽しめるという二面性を備えた、非常に優れたゲームといえるのではないでしょうか。


このゲーム、当時の私は幼かったのでそれほどしょっちゅうプレイしたわけではありませんが、知り合いのバッティングセンターに連れていってもらった時、ただで30〜50クレジットくらいやらせてもらいまくったのが、私にとっては印象深いものでした。
ま、当時の私はまだまだガキンチョで、ゲームをやれれば楽しいという程度の実力しかなかったので、そのクレジットもすぐになくなってしまうほどへたくそなプレイばかりしてましたが。


さて、このゲームは当時はわりと人気が高かったので、ファミコンとスーパーファミコンに移植されています。
ファミコン版では十字キーと2ボタンのファミコンのコントローラで、あの2本のスティックの操作感を再現できるとか?と当時は心配されていましたが、なんとこのゲーム、ファミコンの1コンと2コンを両方使うという大胆な発想で、アーケード版の操作方法をそのまま再現してました。
2つのコントローラを縦に向け、お互いを密着させて使うというものです。
しかもそれだけでなく、カートリッジと一緒にコントローラーに装着する専用スティックまでついていたというから驚きです。
ただこの専用スティック、十字キーに装着してもすぐに外れてしまうようなお粗末な代物で、これつけると逆にやりにくくなってしまうという情けないものでした。
ファミコン版も基本ルールは同じですが、キャラクターのグラフィックがアレンジされていたり、横スクロールアクションの隠し部屋が追加されていたりと、さまざまなアレンジがなされていました。
この隠し部屋は1ステージにに必ず1つ存在してて、どこかに隠されている鍵をみつけて入るというものですが、全ての隠し部屋を発見してクリアしないとラストステージにいけない(隠し部屋未クリアステージはやり直すことになる)という意地悪な要素があります。
もちろん隠し部屋と鍵のありかは外からはまったく分かりません。
アーケードでのただ単純に妨害を避けながらひたすら登るというものから、隠し部屋を探すという余計な探索要素が加わったので、ファミコン版はゲームテンポが悪くなってしまったのはとても残念。
あと隠し部屋も変に難しかったし。
もっともこれは私自身の感想なので、実際にファミコンに移植される際に長く遊べるようにとの配慮は評価できる所ですが。
しかし、それ以外の面では、操作方法もなかなか考えられていたし、グラフィックもアーケードよりきれいになってたりなど、移植度はおおむね良好なので、なんだかんだ言いながらも、ファミコン版もかなり楽しませてもらいました。
そしてスーパーファミコン版は、『ニチブツアーケードクラシックス』というソフトに入っています。
こちらはアーケード版の完全移植で、音楽や効果音がわずかに違うという点を除けば、ほぼ完璧な移植度
もちろんコントロールの方も、スーパーファミコンの十字に並んだボタンを最大限に利用して、あの操作感覚を完全に再現。
そういやX68000版では、『クレイジークライマー1、2』がカップリングされたのがありましたね。

2000年8月28日


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